環境科学研究室で取り組んでいる研究分野

本研究室の研究対象ととマテリアル・エネルギーフローのイメージ

本研究室ではエネルギーの有効活用に関連した様々な技術開発に取り組んでいます。主な研究分野は、「熱利用省エネ技術開発」、「液体燃料の使用を想定した創蓄エネルギー技術開発」、「高度ガス分離・濃縮・環境浄化技術開発」の3つに大別することができ、一見バラバラの技術を扱っているように思えますが、それぞれの技術は密接に関連しあっており、いずれも持続可能な社会を構成するために重要な技術です。

熱利用省エネ技術開発

 化石燃料由来の電力を使用するとそれだけCO2が排出されます。また、電力需要は年間、一日の間で大きく大きく変化し、そのピーク電力需要に対応する必要がありますが、必ずしも電力の供給ピークと需要のピークが一致するわけではありません。需要ピークを満たすためには、化石燃料を使用する火力発電所が稼働されることになります。そこで、本研究室では、電気エネルギーの一部を熱エネルギーで代替する技術として、比較的低レベルの熱エネルギーで駆動可能な吸着式デシカント空調プロセスの開発に取り組んでいます。熱を利用して空調をすることで空調由来の電力需要を削減できます。特に、下記の電力需要ピークを下げることが可能となるため、大幅なCO2の削減が期待できます。また、電力需要に1日・年間の変動があるように排熱にも変動があります。従って、排熱駆動機器を導入には電気エネルギーと同様に排熱の平準化も必須となります。そこで、本研究室では熱・電気エネルギーの平準化を実現するために蓄熱材を用いた、熱・電気統合エネルギーマネージメントシステムの開発にも取り組んでいます。これは、電力・熱需要が少ないときには電気・熱エネルギーを熱エネルギーとして蓄え、電力・熱需要が多いときに蓄えた熱エネルギーを放出するシステムです。電力と熱を統合してエネルギーをマネージメントすることで、総合エネルギー効率の飛躍的な向上を目指しています。

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液体燃料の使用を想定した創・蓄エネルギー技術開発

 次世代の持続可能な社会の一例として水素社会が提唱されています。水素は使用しても水しか生成しないため、非常に環境親和性が高いです。また、水素は水として地球上に豊富に存在しており、枯渇の心配がありません。しかしながら、常温常圧で気体のため貯蔵や輸送が困難です。そのため、輸送や貯蔵が容易な化学物質(=エネルギーキャリア) に変換することが注目されています。本研究室ではエネルギーキャリア として、ギ酸などの炭素系エネルギーキャリア に注目しています。再生可能エネルギー由来の余剰電力を用いてCO2を還元するCO2電気化学還元によって、ギ酸やメタノールなどの常温常圧で液体の燃料に変換することが可能です。また、得られたエネルギーキャリア を直接燃料として用いる直接形燃料電池の開発にも取り組んでいます。これらの技術開発を進めることで、再生可能エネルギーの変動抑制と貯蔵、二酸化炭素の有効活用(CCU)を実現できると期待されています。

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高度ガス分離・濃縮・環境浄化技術開発

 既存の化石燃料に依存した社会では、化石燃料を使用した後に必ず「排ガス」が生じます。その中には、地球温暖化の原因とされているCO2や環境汚染物質である硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)などが含まれています。排出されるガスの濃度は低く、そのまま回収すると莫大な体積を取ることになります。そのため、これらを効率的に回収する技術が必要となります。そこで本研究室では、低濃度で排出されたCO2を分離・濃縮するために吸着材を利用したシステムの開発に取り組んでいます。排ガスからCO2を回収し、そのガスを濃縮することによってCO2の処理や再使用が容易となります。その駆動源に排熱などを使用することにより、余分なエネルギーを使用せずにCO2を回収することが可能となります。また、SOxやNOxなどの有害物質の除去を行うために、本研究室ではMnO2を用いた小型脱硫フィルターの開発にも取り組んでいます。このフィルターを高性能化することで、これまで有効な対策がなされていなかった、船舶などの比較的小規模な排出源からの硫黄分の回収が期待できます。

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