吸着式デシカント空調プロセスに関する研究

一般的な2ローターデシカント空調プロセス
デシカントローターの一例

 100℃以下の排熱を利用して駆動が可能な空調としてデシカント空調プロセスの高性能化に取り組んでいます。2ローター型のデシカント空調はシリカゲルなどの除湿材(吸着材)を塗布したデシカントローターと加熱器・熱交換器・冷却器(オプション)などから構成されています。空調原理は次の通りです。まず、屋外の空気がデシカントローターへと供給され、デシカントローターの除湿剤により除湿されます。この際、水蒸気の吸着に伴い熱が発生するため、熱交換器で室内空気と熱交換することにより予冷します。必要に応じて冷却器で所望の温度まで冷却して室内へと供給します。一方で、連続運転を実現するためにはデシカントローターに吸着された水蒸気を定期的に脱着する必要があります。この工程を吸着材の再生と呼び、排熱などの低級熱エネルギーを使って吸着材を再生します。上記の例では、熱交換器で予熱された屋内空気を排熱などを利用した加熱器で所定の温度に昇温してデシカントローターへと供給しています。なお、吸着材を再生した後の空気は屋外へと廃気します。このような空調原理から、下記のような特長があります。

  • 主な駆動源は熱であるため、電力消費量を大幅に低減できる。
  • 除湿をメインとした冷えすぎない冷房の実現
  • 外気を処理して室内へ供給することによる室内空気品質の向上

大変優れた特長をもつデシカント空調システムですでに実用化されている技術ではありますが、さらなる普及促進や適用範囲の拡大に向けて解決すべき課題がいくつかあります。詳細は下記資料を参照してください。

またこれまでに実施してきた研究テーマは下記の通りです。

  • 太陽熱温水駆動による実証試験 
  • 2段除湿型デシカント空調プロセス 
  • 同時熱交換型除湿機の開発 
  • デシカント空調用吸着剤の性能評価 
  • デシカント空調用吸着剤のVOC除去特性 
  • 間接気化冷却器の最適操作条件の確立
  • ローター内部の熱・物質移動現象の解明

このような研究開発を通して、デシカント空調システムの高性能化を目指しています。

熱/電力統合エネルギーマネージメントシステムの構築

熱/電力統合エネルギーマネージメントシステムの概念図

 二酸化炭素排出削減にむけて再生可能エネルギーの利用促進が進められていますが、自然を相手にする再生可能エネルギーは電力が大きく変動します。そのため、これらの電力を蓄える技術を同時に考える必要があります。このような現象は、排熱にも同時に生じています。そこで、本研究室では再生可能エネルギーの余剰電力と過剰供給される熱を効率的に蓄えて、適切に利用して電力と熱の需給バランスを平準化する技術の開発に取り組んでいます。

熱/電力統合エネルギーマネージメントシステムの研究事例

 本研究では効率的に熱を蓄えるための材料開発に取り組んでいます。蓄熱の種類にいくつかの種類がありますが、本研究室では水蒸気を用いた化学蓄熱に注目しています。蓄熱材に水蒸気を反応させると、水和/脱水反応が生じ、それに伴い発熱/吸熱反応が起こります。熱需要が小さく熱が余っている場面では、蓄熱材に脱水反応を生じさせて熱を吸収します。熱需要が大きい場面では、蓄熱材に水蒸気を供給して、水和反応を生じさせ、熱を発生させます。このようなサイクルで運転することにより、熱を効率的に蓄えることができます。このようなシステムを構築するためには、材料の開発が不可欠であり、蓄熱量が大きい材料やターゲットに適した温度で旧放熱が可能な材料の開発を行なっています。また、優れた材料があってもそこから熱を取り出す反応器が適切に設計されていなければ、材料の特性を存分に発揮することができません。そのため、本研究室では蓄熱反応リアクターの設計にも取り組んでいます。更に、熱・電気の需給バランスを最適化するためのプロセスシミュレーションなどにも取り組んでいます。これらを通じて、プラントなどの消費エネルギーを極限まで低減させることを目指しています。